ソフトを使用して描いたネタ

SS 加藤さんは犠牲になりました…

 今日はおがちんの結婚式。
 兄の一郎太さんにエスコートされて
 バージンロードを進むおがちんはとっても綺麗です。

  

 ………、佐藤くんと結ばれる夢が叶って良かったねおがちん。

  

 ――二人が付き合う切欠になったのは高校生の頃。
 あの頃はもうみんな割と落ち着いてたよね、
 佐藤くんを諦めてないのは同じだったけど
 子供の頃みたいな行動にはすっかり出なくなってて。
 佐藤くんはふたばちゃんに合わせてランクを落とした高校へ、
 それに合わせて私とおがちんも同じ高校へ。
 詩織ちゃんも来たかがってたけど親御さんが許してくれなくて、
 私立女子校へと別れてしまっていた。
 佐藤くんとふたばちゃんの関係は相変わらずで、
 ふたばちゃんは高校生になってもまだ意識してるのかどうか…。
 そんな特に変わらない日常を送って来たある日――。

 「なあふたば、ちょっと話があるんだ…」
 「なあに?しんちゃん!」
 俺はそろそろ限界にきていた…。
 今の関係に不満がある訳じゃなかったけど、
 何となく将来に対する不安が大きくなったんだ。
 進路希望にお前…パパのお嫁さんはねえだろっ!
 このままじゃ高校を卒業したら俺たちどうなっちまうんだろう?
 俺は…流石に大学はそれなりのとこに行かなきゃならないと思う、
 でなきゃ将来ふたばを養っていけないしな。
 っと、それにそこだ。
 ふたばも俺の事を好いてくれてると思うけど、
 それはどの程度なんだろ?
 俺はもう子供の頃から結婚したいって思ってた、
 けどふたばそうじゃなかったら?
 今まで関係が壊れるのが怖くて惰性で過ごしてきた。
 でも今日こそ…今日こそは言うんだ!

  

 「ふたば、俺と付き合ってくれ!」
 「………ごめんねしんちゃん…」

  
  
 「………」
 くそっ!
 そうだった、忘れていた…。
 ふたばがこうなったのもある約束があったからだ、
 「ふーちゃんがパパを守ってあげてね」
 「うんっ!ふーつよくなってパパをまもるー!」
 この約束をおじさんは知らない、でも言う訳にもいかない。
 長女や三女も知ってるのかどうか…。
 ハハッ…すっかり忘れてた、
 ふたばがこの約束を守る限り俺たちが結ばれる事はない…。
 ふたばもずっと約束を守り続けるだろうし、
 俺には止める事は出来ない。
 長い間一緒に過ごしてきたのになんで俺は…、
 ふたばだって我慢してたかもしれないのにな。

  

 「……しんちゃん…」
 自分の不甲斐なさに失望した俺はふたばの前から去った。

 どうしよう…凄い場面に出くわしちゃった…!

  

 しょうがない隊として活動しなくなった今でも
 たまに佐藤くんを追けていた私は、
 雑木林の陰に潜んでいて偶々こんな場面を目撃してしまった。
 まさかこんな日が来るとは…、
 正直なところ佐藤くんとふたばちゃんはずっと離れないものだと思ってた。
 佐藤くんがふたばちゃんから離れた今なら私にも希望あるかも…?
 こんな千載一遇のチャンスを逃す手はないわっ!
 と、そんな事を考えていた時脳裏に浮かんだのはおがちん…。

  

 今まで一緒に佐藤くんを追いかけてきた友達だもの、
 抜け駆けなんてそんな…。
 でもっ!今が一番のチャンスなのよ、
 私だっておがちんに負けないくらい佐藤くんが好きなの!

 でも結局抜け駆けする事は出来なかった、
 積極的にアタック出来なかった私は
 寧ろおがちんをサポートするみたいになっちゃってたな〜。

  

 でもこれで良かったのよね…、
 私はおがちんが幸せになってくれたらそれでいいの。
 「その健やかなる時も、病める時も…(中略)誓いますか?
 新郎」
 「誓います」
 「新婦」
 「誓います」
 「それでは誓いの口づけを…」
 バ――ン

  

 二人が誓いの口づけを交わそうとしたその時、
 教会のドアが勢い良く開かれた。
 「詩織…?」
 あれは詩織ちゃん…?どうして今頃…。

  

 詩織ちゃんにも招待状は送ったみたいなんだけど、
 出席するかどうかの返信は来なかったようで
 高校が別れてからは全く連絡が取れてなかった。
 詩織ちゃんはツカツカと二人の方へ歩み寄って行く、

  

 詩織ちゃんの性格から何か不穏なものを感じ取った私は警戒した。
 二人にもう数歩で手が届く距離に達した時、
 「おがちん、おめでとう」

  

 と言ってハンドバッグから何かを取り出そうとそうしたのを見て
 私は咄嗟に飛び出していた。

  

 ドスッ
 そんな鈍い音がしたような気がした、
 私の脇腹を刃物が穿つ音…。
 激痛で意識が薄れて私は倒れた。
 ドサッ

  

 「真由美―――っ!」
 遠くでおがちんが呼んだ気がした、
 ああ良かった無事だったんだね。
 安心したらなんだか眠くなってきちゃった、
 おがちん…佐藤くんと幸せにね…。

 「おめでとうございます!元気な女の子ですよ」
 そう看護師さんに告げられて、
 取り上げられたばかりの新しい命を私はこの手に抱く。
 今は産まれる前から性別の判定が出来るけど敢えて聞かなかった、
 聞かずとも女の子だと解っていた気がしたのだ。
 「愛梨、お疲れ様」
 そう言って出産に立ち会った夫は私を労ってくれた。
 「ありがとう、信也」
 「女の子なんだってな」
 「うん、何となく解ってたの、だからもう名前も決めてたのよ」
 「へぇ、俺も女の子なら…って決めてた名前があるんだ」
 「「真由美」」
 信也も同じ事を考えてたみたい、
 そう、私の命を守ってくれたかけがえのない親友の名。
 真由美…、あなたはもう還らぬ人となったけど、
 あなたの名前を受け継いだこの子がずっと一緒よ。
 これからも私たちを見守っていてね。


  

  加藤さんの良さを描こうとしたら何故かこうなってしまいました…、
  自分も本来はふたしんなんですけどね。

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